古今書院の雑誌地理に今年5月まで掲載されていた「アクティビティ教材の開発と実践」をまとめて読みました。この連載では、イギリスの中等学校用のロングマン地理教科書とケンブリッジ大学出版による地理教科書が紹介されました。もちろん、これらの教科書は、ナショナルカリキュラムに準拠しています。ナショナルカリキュラムの内容にも、「ゆれ」が認められますが、この辺のことについては、また別の機会に書き込みたいと思います。
この連載の中心人物である広島大学の由井先生は、日本と英国の地理教科書の最大の違いとして感じたことを3つにまとめています。
1.アクティビティを中心として展開する内容構成である。→最低限の学習内容の保障が可能。
2.新聞記事や写真・統計資料などのさまざまな資料を読み取り、それから地理的事象の背景まで考え、アクティビティをとおして地理的スキルが習得される構成である。→日本の教科書は、地理的スキルを強調しすぎたのではないか。
3.多様な地域の比較を行いながら学習することにより、知的好奇心を刺激しながら概念的知識・スキルが習得できるように構成されており、教材開発の重要性がいかに重要であるかを痛感させられる。
この連載で紹介されたようなアクティビティーやワークシートがあらかじめ準備されている教科書を使うことを窮屈と感じる教師の方もいると思います。しかし、転移可能な地理的思考力を育成する教材を自力で開発することは、容易ではないことも事実でしょう。教材開発の事例としてこの連載の内容は私にとって魅力的でした。わが国の教科書でも同じような構成ができるといいのですが・・・その道のりは厳しいのでしょうか?