澁澤文隆氏の「社会科における国際理解教育の課題」という論文の内容を確認したいと思って、ネット上で公開されていないか検索してみました。残念ながら、お目当ての論文は見つけられなかったのですが、「地理は何のために学ぶのか」という質問が教えて!gooの中でなされていました。 以下に、その質問とそれに対する回答(一部)を引用しておきます。
<d_gさんによる質問> 学校を卒業してだいぶ経ちますが、 今更ながら地理は何のために学ぶのかが気になりました。 数学ならば論理的な思考能力の育成、 外国語は伝えたい事の中核を自分で把握する力の育成など、 義務教育で教えられるほとんどの教科において(それが正しいかどうかはさておき)、 何のために学ぶのか、学ぶことで何を得られるのかが私の中にあり、 その教科を学ぶことは大切なことなのだと思うことができています。
社会科においても、歴史や公民に関しては「何のために」が自分の中にあります。
しかし、地理に関しては何のために学ぶのかを未だに見出せていません。 自分の暮らす場所が日本の中で/世界の中で どのような位置にあるのかを知ることは意味があるとは思いますが、 それだけでは理由として弱いと感じています。
いい歳をしてこのような様では勉強嫌いな子どもを前にしようとも、 「勉強は大切だからしておきなさい」などとは恥ずかしくて言えたものではありません。 地理は何のために学ぶのか、何を得られるのか、皆様の答えを教えて頂けないでしょうか。 どうかよろしくお願い致します。
これに対する回答は5人の方から寄せられていました。その中で、ベストアンサーとして選ばれた回答だけ紹介しておきます。回答者は、質問者に各教科の学習の意義について逆質問しているのですが、その部分は省略してあります。
<karen246さんによる回答>
とても興味深い質問です。 わたしも、いろいろな方のご意見をうかがいたい。地理を学ぶことの直接的な実用性については、他の回答者の方々が述べられていますので、別の視点から、わたしなりの考えを記します。
>社会科においても、歴史や公民に関しては「何のために」が自分の中にあります。
d_gさんが、歴史を学ぶ目的についてどのようにお考えなのか知りたいところです。
わたしは、歴史を学ぶ目的と、地理を学ぶ目的は、根本的に同じだと考えています。
「各国の政治・経済・産業(ひいてはそれぞれに住む人々の思想)が、
現在ある様に至ったバックグラウンドを知ること」
歴史における年号の暗記や、地理における地名の暗記などは、
試験で得点するには重要であっても、本質的な学習の目的ではないと思うのです。ドイツ: 氷河によって侵食された土壌 → 農業に不向き → 工業が発達 → …
鹿児島県: 火山灰によって覆われた土壌 → 稲作に不向き → 畜産業が発達 → …
どういう原因・経緯があって、今があるのかを知ることは大切なことだと思います。さらに先にあるのは、、、「自分を知ること」
暑さを知っているから、寒さを理解できます。
光を知っているから、闇を理解できます。
過去を学べば、現在を認識できます。
他国を学べば、自国を実感できます。
、、、他者を知ることで、自分を知ることができます。
質問者のd_gさんは、「社会の一部としての自身に目を向け、考える力の育成」することを地理学習の意義であるという答えに至ったと最終的に述べておられます。こうした問いに対する答えは、地理教育関係にとっては、すでに明確なものとされているのかもしれませんが、一般社会に向けた説明は十分ではないということを感じざるを得ません。
前にも紹介した荒木一視/川田力/西岡尚也著「小学生に教える『地理』~先生のための最低限ガイド~」においては次のように指摘されいます。
学校で教えられた地理学も、学問としての地理学同様に
・世界観を描く
・未知なる地理的情報の収集
・地理的事象のメカニズムの解明
という3つに分けられる。 そして、「さて、もう一度、私たちはなにを教えるのでしょう。」と自問した著者は、「子どもたちに伝えてもらいたいことは、世界を世界として多様なままにみることだと、私たちは考えます。・・・」と述べています。
さあ、地理はなんのために学ぶのでしょうか? わたしも、「とても興味深い質問です。わたしも、いろいろな方のご意見をうかがいたい。」というkaren246さんと同じ気持ちです。